技術・モノづくり
- 技術開発の基本コンセプト
- 技術戦略の推進体制
- 進化する技術戦略
- AI活用とリスク管理
- 指標と目標
- 技術を通じた社会貢献
技術開発の基本コンセプト
DeNAのモノづくり体制は、一般的な要素である「Product(プロダクト)」「Design(デザイン)」「Development(開発)」に加え、「Quality(品質管理)」「Infrastructure(インフラ)」「Security(セキュリティ)」の3要素を含めた6つの要素が相互に支え合う「総合力」で実現されています。創業以来、徹底したサービス指向とともにこのモノづくり体制を培い、中でも特にセキュリティやインフラ領域では専門部隊によって構築される強固な基盤を強みとしてきました。
現在、AIをこれらの全領域に不可欠な要素として深く組み込み、それぞれの活動を劇的に強化・アップデートし、DeNAの技術開発のあり方を再定義しています。

Product プロダクト
リサーチと市場理解がAIにより加速・深化し、情報収集・整理・出力が劇的に効率化されています。事業戦略や検証計画のシミュレーションも高速・精密化され、迅速な意思決定を支援。また、Vibe Codingを使用したプロトタイピングにより、高速な仮説検証サイクルが可能となっています。
Design デザイン
AIにより、デザイナーの役割は拡張しました。さまざまなAIデザインツールを組み合わせることで制作コストを大幅に低減する「ビルダー」と言われる領域や、AIと協業しながら「作ることで考える」高速な試行錯誤を可能にする「プロトタイパー」に役割を広げ、デザインの質と量の両面を向上させています。
Development 開発
すべてのエンジニアが、AI開発支援ツール(Cursor, GitHub Copilot, Devin, Claude Code, codexなど)を全面導入して完全武装、開発効率を劇的に向上させています。
そのエンジニアが、AIを前提に業務フローを組み替える「AIネイティブカンパニー」への移行を強力に牽引しています。
Quality 品質管理
「品質は全員で作り込む」という考えに基づき、開発サイクルの工程にAIを導入し、Q(品質)・C(コスト)・D(納期)の継続的な最適化を目指しています。上流ではAIがリスクを予測し効果的なテスト観点を提案することで高品質と手戻りコスト削減を実現、下流ではテストケース自動生成で工数を削減し開発サイクルの高速化に取り組んでいます。
Infrastructure インフラ
1日あたり約150億リクエスト、ペタバイト級のデータを持つ大規模システムを安定運用しています。この大規模システムの信頼性を維持するため、24時間365日の常時監視とインシデントへの即時対応にObservabilityとAIOpsを導入し、異常検知や根本原因分析(RCA)の迅速化を実現しています。膨大なログやメトリクスの傾向分析をAIに委ねることで、運用の自動化と高度化を実現し、より高速で正確な判断が下せるようになっています。
Security セキュリティ
セキュリティガバナンスの実現に、自社開発AIを積極的に活用しています。社内規定やルールを学習したAIアシスタントは、従業員がどんな疑問も気軽に聞ける環境を作り、セキュリティ意識を組織に根付かせます。また、導入ツール等の安全性評価もAIで自動化し、事業を止めない迅速な安全検証を実現。AIとの共創による「攻めのセキュリティ」で、安全な挑戦と成長を支えています。
ガバナンス:技術戦略の推進体制
DeNAにおけるAI戦略を含む技術戦略の推進体制は、各事業ドメインに直結する「事業部門」、全社横断で技術の集約と高度化を担う「CoE部門」、および独立した専門性からリスク管理を行う「ガバナンス部門」の3つの階層が密に連携し、それぞれが機能を発揮する「総合力」で実現されています。創業以来、事業部門と全社横断型組織が徹底した連携によってモノづくりに取り組み、中でも特にリスクマネジメントやセキュリティ領域では専門部隊や各種委員会によって構築される強固な基盤を強みとして確立してきました。現在、このガバナンス体制を全社を挙げたAI戦略の遂行に不可欠な統括基盤として深く組み込み、取締役会や経営会議といった各会議体とも密に連動させることで、安心・安全とビジネススピードを高い次元で両立する独自の推進体制を構築しています。
技術マネジメント体制
各事業に配置する技術責任者GEXと、事業横断のCoEの両輪で機能しています。両者で構成する「エンジニアボード」を、全社横断の技術事項を審議・決定する機関として設置し、全社に関わる重要な技術方針はここで意思決定します。一方、個別の技術トピックスをより深く掘り下げる役割は、テーマごとに設置された各ワーキンググループが担っており、全社的な意思決定と現場に即した専門的な検討を、それぞれ適切な粒度で進める体制を築いています。
■推進体制図

CoE(センターオブエクセレンス)の重要性
IT本部は、単なる社内IT部門ではありません。モノづくりの根幹をなすケイパビリティを全社横断で提供する「CoE」です。DeNAは、各事業部に機能を分散させるのではなく、この横断組織に機能を集中させることで、全社一丸となった大きな変革をスピーディに推進できる体制を築いてきました。これがDeNAの大きな強みです。各事業領域では「事業責任者」と「技術責任者」が全社ガバナンスの徹底と事業固有のリスクに責任を負っており、CoEはそれぞれの事業に個別に向き合う「伴走者」として、事業に最適な課題解決に取り組んでいます。
AIの攻めと守り
‐ AIエキスパートチーム
AIの専門知識と事業ドメインの知識を併せ持つ「AIエキスパートチーム」が全社横断のAI活用を推進しています。推進にあたっては、IT本部 本部長およびAI推進担当のグループエグゼクティブ(GEX)が全体統括を務め、エンジニア、法務、品質管理、セキュリティ、各事業部門の専門家からなる約150人のメンバーにて構成されています。また、約30名体制のエンジニアチームが、最新のAIツールの評価を常時実施しています。
このチームは、ツールの評価だけでなく、蓄積されたAI技術と活用ノウハウをもとに、優先順位やアプローチの企画・決定から、技術選定・開発・運用までを機動的に実行する司令塔機能を担います。専門性だけでなく、AIを用いていかに事業貢献するかを重視している点が大きな特徴です。
‐AIガバナンスコミッティ
DeNAでは、AI・データ戦略統括部、法務部、セキュリティ部、IT戦略部、コンプライアンス・リスク統括室といった複数の部門が横断で関与する「AIガバナンスコミッティ」という体制を敷いています。
このコミッティが中心となり、全社的なツールの利用状況やAIの適用状況を網羅的に監査・監督しています。この体制によって可及的なスピード感で、全社戦略に基づいたシームレスな浸透を図っています。
進化する技術戦略 「仕組み化」から「実装」、そして「事業化」へ
DeNAでは、創業以来一貫して、ITとAIの最先端の技術を使いこなしながらモノづくりに取り組んできました。徹底したDXによる仕組み化(Phase 01)を土台に、クラウドへの全面移行と全社的な「AIオールイン」(Phase 02)を推進し、現在はエンジニアリングの価値を経営指標へと連結させ、社内での徹底した実践(AX - AIトランスフォーメーション)をエンジンとして、新規事業と社外への価値創出、すなわち事業化(Phase 03)へと歩みを進めています。強固なガバナンス、独自のデータ基盤、そして全従業員のAIネイティブ化を三位一体で推進することで、技術がDeNAの中長期的な成長を牽引しています。
「仕組み化」によって築かれた強固な基盤は、クラウドとAIの全社実装を経て事業の競争力へと転換され、いまや新規事業の創出と社外への価値提供という「事業化」の段階へと結実しつつあります。DeNAはこれからも、安心・安全とスピードを高い次元で両立させながら、ITとAIを核とした技術戦略によって持続的な成長と新たなDelightの創造に挑み続けます。

リスクマネジメント:AI活用とリスク管理
DeNAは、「DeNAグループAIポリシー※(以下「本ポリシー」)」を2023年2月24日に制定し、同年3月27日に公開しました。
AIの利活用は、DeNAグループの事業運営の推進に大きく寄与する一方で、使い方を間違えればステークホルダーへの不利益などにも繋がる恐れがあります。本ポリシーは、安心・安全かつ信頼できるAIの使い方をしていくために、法令を遵守し、AIの適切な利活用をグループ全体で推進していく指針として、 設計されています。すでに存在していたDeNAの強固なITガバナンスに立脚したポリシーとすることで、スピード感は決して損なわずに安心・安全との両立を実現しています。
強固な情報セキュリティとプライバシー保護
DeNAは、顧客から預かる情報の適切な保護と、提供サービスおよび社内システムのセキュアな維持を情報セキュリティの基本方針として掲げています。この方針に基づき、「DeNAグループ情報セキュリティポリシー」を中心に、「グループ情報管理スタンダード(GISP)」と「グループ情報システムスタンダード(GISS)」を整備・順守し、安心安全なサービス提供に努めています。さらにサイバー攻撃の高度化に対応するため、セキュリティポリシーを常にアップデートし続けています。
また、個人情報管理委員会と情報セキュリティ管理委員会を設置し、グループ横断的な管理体制を構築。これらの委員会で議論された事項は定期的に経営会議や取締役会に報告され、経営上の重要な意思決定に反映されています。
セキュリティ対策の高度化と内製化
DeNAでは、攻撃シナリオを踏まえたセキュリティ対策を導入しています。業務上不要な通信の制御、通信の監視・分析、脆弱性※対応、セキュアコーディングおよびデータの項目単位での暗号化など、多層的に対策を講じ、リスクを低減しています。また、従業者一人ひとりが個人情報およびセキュリティに関するルールを守り、十分に配慮できるよう、入社時、年次、役職就任時、内外環境の変化時などのタイミングで役割に応じた教育や研修を実施しています。
インターネット環境で多様なサービスを提供する当社にとって脆弱性対策は極めて重要であり、社内のセキュリティエンジニアがWeb・スマホアプリ診断を年189件、ネットワーク診断を年3,632 IP実施しています。この豊富な実績から、社外より診断を依頼されるケースもあります。
さらに、診断ツールやクラウド自動監査・パッチ管理システム等を自社開発してグループに最適化しており、一部ツールはオープンソースとして一般公開しています。マルウェア流行時にも速やかに解析・ブロックする仕組みを自社開発して適用するなど、脅威に対して迅速かつ柔軟に対応できる体制を構築しています。またクラウドサービスの設定ミスによる情報漏洩を防ぐため、AWSやGoogle Cloudの設定値を毎日自動的に監視し、ミスがあれば通知する仕組みも自社開発しています。
※プログラムの不具合や設計上の不備によって発生する、ソフトウェアのセキュリティ上の欠陥
AI活用におけるガバナンス体制と安全性確保
AIガバナンスについては、これまで構築してきたITシステムのガバナンス体制をAIツールにも適用し、予実管理や資産管理だけでなく、アクセス管理も安全に行うほか、AI特有の頻繁なアップデートサイクルに伴う脆弱性やリスクにも即応できる体制を整えています。
AIツールの導入においては、扱うべき情報区分や管理体制などの一定のルール下で即座にツールの導入や検証を行うことが可能な「試用」と、十分なリスク評価を行ったうえで導入する「利用」を明確に分け、それぞれでプロセスを整備しています。「試用」の段階では、まず簡易なチェックのもとで実務検証を開始します。それと並行して法的観点やセキュリティ観点の詳細なレビューを行うことでリスクをコントロールしつつ、迅速な立ち上げを可能にしています。このように、変化の激しいAI技術に対して、ビジネスへの迅速な取り込みと、全社的なガバナンスの維持を高いレベルで両立させています。
指標と目標
DeNAは、経営資本のマテリアリティにおいて、KPIを設定しています。知的資本では、「技術の強化・新技術への対応と牽引」を掲げ、AI技術をはじめとした新たな技術の社内外での積極活用や、技術を発信し社会の技術向上への貢献を目指しています。
2025年8月末、全社のAI活用スキルを評価する新指標「DeNA AI Readiness Score(DARS)」を導入しました。各従業員のAI活用レベルを測る「個人レベル」と、組織としての活用レベルを測る「組織レベル」の2軸で構成し、半期ごとに可視化しています。2025年度末までに全組織がDARS組織レベル2へ到達することを目標に掲げていましたが、実績として組織レベル2以上への到達率は100%、個人レベル2以上も76%に達し、初年度から着実な成果を上げています
| 指標(KPI) | 評価詳細 | 実績 | |
|---|---|---|---|
| 2024年度実績 | 2025年度実績 | ||
| AIエージェント利用者数 | Gemini Advanced MAU ※1 | 1,000人 | 1,480人 |
| 従業員のAIスキル評価 | DARSレベル2以上(個人)※2 | - | 76% |
| 組織のAIスキル評価 | DARSレベル2以上(組織)※2 | - | 100% |
※1 Monthly Active Users(月間アクティブユーザー数)を指しています。
※2 当社独自のAIスキル評価指標。レベル2は「日常的な業務利用」が可能な水準を指しています。
技術を通じた社会貢献
DeNAは、幅広く様々な事業で技術を活用していることを広く知っていただくことで、世の中の技術の進歩・進化に役立ちたいと考え、当社の技術に関する取り組み・チャレンジを発信するエンジニア向け技術カンファレンス「DeNA TechCon」を2015年より毎年開催してきました。
2026年3月には、エンジニアに限らずより多くの方にAI活用の広がりを知っていただけるよう、「DeNA × AI Day 2026」としてオフラインで開催しました。AIによってもたらされた変化の熱量を確かな成果とともにお伝えする登壇発表や現場エンジニアとの対話、デモ体験ができる展示ブースなどリアルな場ならではの体験を提供しました。
加えて「DeNA Engineering」のブログでも、エンジニアが、実際の課題とそれに対する技術的チャレンジについて執筆した記事を公開するほか、社外技術カンファレンスにも積極的に参加・登壇しています。
また、世の中の技術向上に貢献することを目的とした取り組みとして、「DeNA TECH STUDIO」というプログラムを用意しています。DeNA社員と社外技術者が、エンジニアリングに関する勉強会を気軽に開催できるようサポートしています。
AI分野では取り巻く国内外の情勢と流動性が激しさを増す中で、日本経済団体連合会のAI活用戦略タスクフォースにも社員が参加し、政策・法的整理などの情報収集と提言を含め業界に先行した貢献に努めています。
AI推進担当グループエグゼクティブ(GEX)が、経団連「AI活用戦略タスクフォース」や文化庁「AIと著作権に関する関係者ネットワーク」等に参画し、経済産業省、内閣府、IPA(情報処理推進機構)、文化庁、公正取引委員会、個人情報保護委員会など関係省庁・機関とのコミュニケーションを行っています。 これらの場を通じて、AI関連法規や国内外の情勢を把握するとともに、実務活用に向けた政策提言等の活動も行っています。
また、当社の強みでもある、ユニークで多様な事業展開とそれらに対するAI適用、そしてDeNAの強みの一つでもあるデザイン・ソリューション開発能力のシナジーを最大化し、日本ではまだ確立されていないAIUX※のリーディングカンパニーを目指し、学会やTechイベント、ブログなどでも、AIに関する技術や知見を社内外向けに積極的に公開しています。
※AIのソリューション開発を進めていくなかでのユーザー体験・価値の最大化
