技術・モノづくり
上流工程から全員参加で高品質を生み出す、独自の開発スタイル
どれほど新規性があり、画期的なサービスであっても、お客様が触れる時に不安定な状態であれば、その魅力が伝わらないばかりか、それを提供するDeNAへの信頼を失いかねません。そこで、DeNAでは全社横断型組織内に専門部署を設け、一定以上のクオリティを担保する仕組みを構築しています。多くのIT企業はモノづくりの基本機能「Development(開発)」「Design(デザイン)」「Product(プロダクト)」を持っていますが、DeNAではそれらを支える「Infrastructure(インフラ)」「Security(セキュリティ)」「Quality(品質管理)」が事業成功確率を高めると考え、全社横断型組織内に専門部署を設置しています。
DeNAが考えるモノづくり体制

Quality 品質
品質はプロダクト、プロジェクトに関係する全員で作り込むものとDeNAでは考えており、要件定義や機能設計などの上流工程から詳細設計や実装などの下流工程まで品質を作り込み、改善しています。また、DeNAの幅広い事業領域で求められる品質担保のための検証工程や検証技術を開発するとともに、事業・技術ドメインの深い理解による検証精度の向上、過去の経験を活かした改善、お客様の声をもとにした妥当性検証などにも取り組んでいます。
Infra-structure インフラ
2020年よりクラウドをフル活用する方針にシフトし、事業スピードと低コストを両立しながら、DeNAグループ全体で1日約50億リクエスト※ 、データ量はペタバイト級のトラフィックを安定して扱っています。万が一、稼働中のシステムに何らかの障害が起きた際にも、待機システムに切り替える仕組みによってダウンタイムを限りなくゼロにすることができています。また、サービスによって異なるインフラ環境に合わせた仕組みを構築し、ユーザにより快適な環境を提供しています。
※リクエスト:サーバーと通信してインターネットを使ったサービスを取得すること
Security/セキュリティ
組織と技術の側面からセキュリティ施策を事業に適用していくために、複数の部署からなる横断的なセキュリティ対策チーム「DeNA
CERT」を編成。平時においても事業部門と連携し、セキュリティポリシーの浸透に努め、最新のセキュリティ対策を実施するとともに、安全・安心なサービス提供に尽力しています。万が一インシデントの恐れが生じた場合には、DeNA
CERTが中心となり対応します。専門性の高いメンバーが在籍しているため、迅速に対応することが可能です。
情報セキュリティ
技術の強化・新技術への対応と牽引
DeNAでは、専門性の高いエンジニアが技術力と発想力で、事業の実現や安定的で高い品質の運用を推進しています。
また、DeNAでは、すべての従業員が、AI技術をはじめとした新たな技術を積極的に活用しながら事業に実装し、新たな価値を生み出すことに挑戦しています。そして、フロントランナーとして培った技術知見を社内外に示すことで社会の技術的発展を牽引していくことを目指しています。
ーコミュニティの質向上にネットワークサイエンスを活用
「Pococha」では、コミュニティの質を重視しながらも、その定量的評価に課題を感じていました。そこで、ネットワークサイエンスを活用し、コミュニティの熱量を可視化する取り組みを開始。優秀なデータサイエンティストと連携し、ネットワークグラフを用いることで、コミュニティの成長過程や現状を視覚的に把握でき、施策の効果を多面的に評価できるようになります。これにより、事業部メンバーが直感的に状況を理解し、意思決定の質を向上させることが期待されています。
―ブロックチェーン技術の特徴を活かしたエンタメ開発
ブロックチェーン技術を活用したクイズゲーム「trivia.tech」を開発しました。2024年1月に日本で公開した際は、公開後わずか8時間で終了するほどの人気に。6月にはUS市場向けに展開しています。急速に進化している「ブロックチェーン技術」は、パスワードが不要で、DBやサーバーを持たないため、世界中のユーザーの認証・支払い・取引を安全に実現し、快適な取引スピードとコスト低減を両立します。今後はさらに普及すると予想されるため、サービス提供を通じて、最先端の技術開発を続けています。
―サイバーセキュリティ向上への取り組み
DeNAのセキュリティ部所属メンバーが「サイバーセキュリティに関する総務大臣奨励賞」を受賞しました。日本各地でサイバーセキュリティに従事するシーサート(CSIRT)のコミュニティ形成を促進したことが評価されました。セキュリティ部では社内向けの研修やインシデント対応演習などを行っていますが、このような社外活動で得られた知見や情報を元に、DeNAの社内セキュリティ教育のアップデートを図るなどレベル向上に取り組んでいます。

AI技術をはじめとした新たな技術の社内外での積極活用
ー生成AIを活かした生産性の向上等、新しい働き方への取り組み
生成AIを手軽に利用できるようにと、「Azure Open AI
Serviceに接続したGPT4モデル」をSlackbotとして全社員に提供。社内のドキュメントやナレッジを学習したモデルとなっており、社員の生産性が向上しています。さらに、汎用的なタスクやプロンプトの共有が容易にできる環境を構築し、社員一人ひとりが生成AIの恩恵を手軽に受けられる状態にする社内プロジェクトを進行しています。
ーKaggle Grandmaster等、屈指のスペシャリストと事業・サービスの協働
DeNAでは、AI技術の向上や活用も積極的に推進。データサイエンスチームのメンバーを対象に、米グーグルのKaggle※での成績に応じて業務時間をKaggle参加に利用できるKaggle社内ランク制度を導入。コンペティションで鍛えた幅広い引き出しと素早い実装力をAI技術を活用した新しいサービス・プロダクトの開発に応用しています。
*企業や研究機関などが提供するデータについて、世界中から集まる参加者が機械学習モデルの性能を競う機械学習コンペティションのプラットフォーム
【DeNAのデータサイエンティストの成績】
2023年 | 10月 | Kaggleコンペティション「LLM Science Exam」金メダルを獲得 |
12月 | Kaggleコンペティション「Child Mind Institute - Detect Sleep States」優勝 | |
12月 | Kaggleコンペティション「Stanford Ribonanza RNA Folding」金メダルを獲得 | |
2024年 | 2月 | Kaggleコンペティション「Santa 2023 - The Polytope Permutation Puzzle」金メダルを獲得 |
ー生成AIによるリアルタイム音声変換技術を開発、様々なシーンでの利用へ
DeNAが開発した「スマホで低遅延」「高品質」「低コスト」を同時に実現するリアルタイム音声変換AI技術を様々なシーンで利用しています。例えば、新感覚Vtuberアプリ「IRIAM」では、配信者がこの技術で音声変換しながら配信を行う等、事業応用に向けた実証実験を実施しています。
ー医療・ヘルスケア領域では、生成AIで業務効率化など医師の働き方を支援
医療や介護現場での生成AI活用は、業務の効率化や診断精度の向上、医師の働き方改革など様々なメリットが挙げられます。一方、未学習の症例の見落としなどのデメリットへの留意も必要です。(株)アルムは、医療・ヘルスケア領域における生成AIエコシステムプロジェクト※を開始。生成AIのメリットの最大化や、未病・医療・介護におけるリスクのコントロールに繋がる本プロジェクトにパートナーの皆様と共に取り組んでいます。
*詳細はプレスリリース参照(https://dena.com/jp/news/5116/ )

技術を発信し 社会の技術向上に貢献
DeNAでは、事業を通じて得た技術的知見を社内に留めることなく、積極的に外部へ発信していくことで、社会の技術向上に貢献することを目指しています。
2016年から、学生や社会人を対象とした技術カンファレンス「DeNA
TechCon」を開催しています。2024年2月には「POLYPHONY」をテーマに、DeNA「らしさ」を構成する「ひと」と「技術」によりフォーカスし、ゲーム、ライブストリーミング、AI、Web3、ヘルスケア、メディカルなど幅広いトピックに触れながら、各事業の技術的なチャレンジを紹介しました。当日は、オフライン・オンラインで約1,000名が参加しました。加えて「DeNA
Engineering」のブログでも、エンジニアが、実際の課題とそれに対する技術的チャレンジについて執筆した記事を公開するほか、社外技術カンファレンスにも積極的に参加・登壇しています。
また、世の中の技術向上に貢献することを目的とした取り組みとして、「DeNA TECH STUDIO」というプログラムを用意しています。DeNA社員と社外技術者が、エンジニアリングに関する勉強会を気軽に開催できるようサポートしています。
また、渋谷に拠点を置くIT企業として、DeNA、(株)サイバーエージェント、(株)MIXI、GMOインターネットグループ(株)の4社は、日本のITによるイノベーションが加速されることを願い、2018年7月に 「BIT
VALLEY」プロジェクトを発足しました。以来、「企業の垣根を越えて、日本のIT産業の発展を後押しする」をビジョンに掲げ、これまで4回のカンファレンスなどを通して 、IT人材の育成やITのモノづくりに携わる人の技術を底上げする施策に取り組んでいます。

AI技術の活用体制の整備と社会への貢献
DeNAでは、事業戦略や課題に向き合い、AIを企業活動に適応させるよう努めています。データを安全に利活用し、事業適応を見据えたAI技術開発を進めることが、事業を支え、お客様へのさらなる価値提供に繋がると考えています。
2023年には、法令を遵守し、AIの適切な利活用をグループ全体で推進していく指針として、「DeNAグループAIポリシー」を定め、取締役会で決議しました。加えて「DeNAグループAIガイドライン」を制定しました。このガイドラインは、社員が参照・実践することで、AIのリテラシーを高め、事業活動において便益とリスクの適正なバランスを確保し、AI活用を推進する目的で制定しています。また生成AIに関するマニュアルの整備やAIリテラシー研修を実施するなど、全社員がAIを活用できる環境が整備されています。
こうした活動は、AIが取り巻く国内外の情勢と流動性が激しさを増す中で、日本経済団体連合会のAI活用戦略タスクフォースにも社員が参加し、政策・法的整理などの情報収集と提言を含め業界に先行した貢献に努めています。
また、当社の強みでもある、ユニークで多様な事業展開とそれらに対するAI適用、そしてDeNAの強みの一つでもあるデザイン・ソリューション開発能力のシナジーを最大化し、日本ではまだ確立されていないAIUX※のリーディングカンパニーを目指し、学会やTechイベント、ブログなどでも、AIに関する技術や知見を社内外向けに積極的に公開しています。
※AIのソリューション開発を進めていくなかでのユーザー体験・価値の最大化
テクノロジーレポート AI/データ活用編