従業員とともに
1995年に慶應義塾大学医学部を卒業後、厚生省(現 厚生労働省)に入省。医師免許をもつ医系技官として20年以上に渡り勤務。メタボリックシンドロームなどの生活習慣病や感染症の個別疾患の対策立案に従事。また、医療情報の適切な提供から医薬品・医療機器の開発支援に至るまで各種施策に携わる。消防庁、在比日本大使館、石川県健康福祉部にも出向。インターネットやAIを活用し、人々が楽しく継続的に健康でいられる仕組みを民間の現場から提供したいという思いから2019年4月DeNA入社、Chief Medical Officer(CMO)に就任。
2020年2月より新型コロナウイルス対策本部長、同4月よりDeSCヘルスケア株式会社 代表取締役医師。
2020年8月には厚生労働省 新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する厚生労働省対策推進本部事務局参与に就任。2021年4月よりDeNAのChief Health Officer(CHO)に就任。
ー2016年にCHO室を立ち上げた当初の思いを教えてください。
南場 : 室長代理の平井さんから提案をもらった時彼は、私を説得するために、生産性やプレゼンティーズム(心身の不調によって十分なパフォーマンスが出せない状態のこと)の話をしたと思うんです。熱意は感じつつも、私としては一緒に仕事をする仲間や家族が健康でいるっていうことが一番大事だなと思っていたので、そう意見しました。
一緒に働く仲間って大事じゃないですか。だから、CHO室を立ち上げることで、その仲間が健康を壊したり、仲間の家族が病気になったりで悲しい思いをしたりするのが減るというのであれば私も嬉しいという思いでCHOを引き受けたんですよね。
ー今回、三宅さんにCHOを引き継ぐことになった背景を教えてください。
南場 : 次の世代に任せていくという過程の中で、CHOについても三宅さんに託していきたいと思い、声をかけさせてもらいました。いいですね!と快諾してくれてうれしかった! CMOでもあるし、医師免許もある三宅さんに託すことは、すごく自然な流れに感じたんですよね。
三宅 : 私も、とてもいいタイミングでお話しをいただけた、という印象です。というのも、コロナ対策の対策本部長として感染防止や働き方などについて考えていく中、リモートワーク下における社員のメンタル面が心配になっていたんです。そこで、リモートワーク下での働き方について何かできることはないかと考えている時期だったので、社員を健康面からサポートするCHO室とは向いている方向が同じだなと。
変化する“働き方”に潜む健康リスクを想定。社員の未来をいち早く見据える
ー新型コロナウイルス感染症予防などの観点から、DeNAではいち早くリモートワークの体制を整えましたよね。
社内で実施したアンケート(※1)の結果によると、リモートワークになったことで、生産性がアップしたという結果が出ています。
南場 : リモートワークで健康とはどういうことなんですか?
三宅 : オフィスワークの頃より、朝食やランチをしっかり取れたり、通勤時間が睡眠時間や疲労を早めに解消する時間に置き換わったり、家族との時間が増え時間を有効に使えたりするようになった点が理由としてありそうですね。
南場 : なるほど。私も、スキマ時間にストレッチをやるようになりました。動画コンテンツもいろいろあるので、自分にあったものを選んだりしてね。
三宅 : CHO室でも、2020年4月から社員向けにオンラインヨガクラスを開いたりしていますよね。社内アンケートによるとリモートで健康状態が良くなったという結果もあるものの、気になる点もあるんです。体調面では6割が体重増加していること、そのうちの4割が3kg以上増えているというんです。また、以前は0.5%だった1日の歩く量が1500歩以下という人が40%になるなど。今はまだ目に見えていませんが、生活習慣病が悪化していく可能性も否めません。
南場 : 中長期で見ると、リモートワーク下の運動不足は不安は残りますね。
三宅 : もう一つ心配だったのはメンタル面についてです。リモートになって孤独感を感じたり、コミュニケーション不足で気が滅入る人が多発するのではないかと思っていたのですが、意外とコミュニケーションが楽になったという声が多く聞かれてびっくりしました。作業に集中するという意味では、リモートワークは最適なのかもしれませんが、そんな中でも社内アンケートによると1割ほどの人がメンタルに問題を抱えているという結果も無視できません。
南場 : どの会社からもコロナ禍におけるメンタル面の課題が聞こえてきますね。DeNAの場合、今の状況がプラスの方に作用しているというのは、往来の日本の企業とだいぶ違うところがあるDeNAらしさなのかもしれない(笑)。リモートワークの徹底ぶりや順応の仕方などもそうです。
ただ、腰痛や目の疲れ、肩こり、睡眠の問題など、DeNAとして抱える健康課題も明らかです。その課題に寄り添い問題解決に向き合って、いい方向に動けると素敵だなと思います。
三宅 : そうですね。南場さんがこれまでやっていただいたおかげで、健康経営銘柄も2年連続で選定されたり、輝かしい資産を引き継げるので、そのDeNAらしさをうまく活用しながら、状況に応じた施策を打ち出していきたいですね。
南場 : DeNAは若い社員が多いので、健康のありがたみに気づいていない人も多いと思うので、失って初めて気づくということをなくしてあげたい。「健康、健康」と押し付ける必要はなく、ゲーム感覚でもいいし、遊びながら健康にあるような工夫をしながら、結果として健康にとってプラスな職場環境ができるといいかな。
楽しみながら、健康が当たり前の世の中をつくっていきたい
三宅 : まさに、そういった施策について、CHO室メンバーと検討しているのです。例えばこれまでオフィスのトイレに掲示していたオリジナルポスターなどもリモートになると見てもらう機会が減ってしまうので、Zoomの背景にして社外の人とのアイスブレイクにしたりできないかとか。
健康保険組合や自治体に導入にしていただいている、DeSCヘルスケアのヘルスケアエンターテインメントアプリ「kencom」の社内トライアル版の導入を進めています。「kencom」は企業向けのサービスではないため、あくまでもトライアル導入ではありますが初、全社員に導入したいと調整しています。具体的な活用方法としては、kencomの「みんなで歩活」というアプリ内で開催されるイベントを使って、チーム対抗で歩数を競い合うなどを考えています。賞品が豪華だとみんなもやる気になると思うので、南場さんも賞品提供お願いしますね(笑)。
南場 : 任せておいて!まずは社員の健康意識を高めていくのはもちろん、そういう思いが家族にまで広がるとよりいいですよね。社員の意識が高まって楽しく前向きに健康に向けた行動や生活が送れるようになると、家族にもその意識は広がると思うんです。もちろん、これは短期的に実現できることではないと思っています。施策を通して「病気になるはずがならなかった」という証明できるものではないけれど、じわじわと社員の健康意識が高まって、それが家族の健康増進に少しでも繋がると嬉しいですね。
三宅 : ファミリーデーや、以前行っていたという社内運動会のように家族も呼んでみんなでできたらいいんですが、なかなか難しい。ただ、今はリモートワークということで、社員が目標歩数を達成するために普段以上に歩くようになれば、その行動を見た家族に何かしらの行動変容が起こるかもしれない。家族も参加できるオンライン運動会などもいいなと。そんなふうに家族も巻き込んでいけたらいいですね。
南場 : いいね。三宅さんの話を聞いていると今後のCHO室の施策もより良くなっていく感じがします、楽しみ!
ーでは最後に、南場さんからのバトンを受けつつ、
新しいCHOとして三宅さんが今後目指す方向ややっていきたい施策について改めて聞かせてください。
三宅 : リモートワーク9割下での健康経営とは何かを考えて、いろいろトライ&エラーを繰り返しながらも、絶対により良くしていきたいという思いがまず根底にあります。
現状はそこまでの問題になっていない部分もありますが、メンタルと体調の二つが今後大きな課題になると考えています。出社からリモートワークになり、2,3年したところでゆり戻しがくると思うんです。実際、リモートうつが増えたとかコミュニケーションができなくてクリエイティブなアイデアが出なくなったとか、負の面が聞こえてきて、アメリカでは一部在宅から出社に戻した企業もありますよね。
私たちは、本社の移転など今後もリモートワークを基本の働き方としていくという舵を切ったのだから、リモートワークのデメリットに向き合い、解消していく新しい働き方モデルを作りたいと思っています。
そのためには運動とメンタルを楽しく健康的に組み合わせたいし、マインドフルネスやヨガなどで一緒に集う場を作ったり、競争することでみんなで激励し合ったり、楽しみながらも健康になっていく施策を打ち出していきたいですね。