プログラミング教育3年間の軌跡、武雄市小学校での成果発表会
文部科学省が、2020年に改訂を予定している次期指導要領では、小学校でプログラミング教育が必修化されます。DeNAではインターネット企業ならではの社会貢献として、2014年度から、佐賀県武雄市にて公立小学校でのプログラミング教育に取り組んでいます。 武雄市の山内西小学校では、本年度で3年目を迎え、2014年度に一期生としてプログラミング授業を開始した1年生は3年生になりました。 去る2月17日に、1年生から3年生までの3学年がそろった成果発表会が行われましたので、その様子と児童の作品をレポートします。
3回のアンコール、1年生でもミニゲームをつくれた!
3学年とも1年間で10回前後の授業を行い、前半でプログラミングの技術の学習、後半は自由制作を行いました。この成果発表会では、自由制作の作品をクラスメイトと保護者の前で発表します。それぞれの制作意図や工夫したところを説明し、その後、作品をモニターで投影するという流れです。
1年生は「繰り返し」「条件」という技術を用いたアニメーションやゲームを制作しました。 初めての発表会にドキドキしている様子で、発表のために作ったシナリオを握りしめてしまい、紙がぐちゃぐちゃになっている子もいます。それでもモニターの前に立つと、戸惑いながらも一人づつ発表を行うことができました。 「魚つり」をテーマにした作品は、堤防から魚を釣る様子がよく再現されていました。釣り人をタップすると糸が垂れて魚を釣り上げます。「キャラがぶつかったなら」というブロックをうまく使っているため、タイミングがずれると釣り上げられないというミニゲームになっています。そのため見ていたクラスメイトも大興奮。1年生は反応が素直で、大きな歓声があがります。「もう1回!!」というアンコールに、3回も再生しました。
2年生はチームでアニメーションを制作
2年生は「メッセ―ジ」「変数」を使った授業を行いました。2年生では3人ずつのチームを組み、同じコンセプトで作品制作を行いました。「変数」は大人でも理解するのが難しいのですが、子どもたちは苦労しながらも、作品に取り込みました。
紹介する作品のタイトルは「そらからパラパラ」。雲をタッチすると空から何かがパラパラとふってくるストーリーで、降ってくるものを、3人それぞれに「お菓子」「花」「雪」としています。また、プログラムについても、変数を使う場所を、「女の子の動き」「雲の動き」「雪の数をカウント」とそれぞれにプログラムしています。チーム作業ですが、それぞれに個性の違った作品に仕上がっているところが面白いです。
3年生は「こんなロボットがあったらいいな」を表現
3年生の本年度のテーマは「データ」。11月の公開授業ではロボットを使って行いましたが(その時の様子はこちらから)、その後、自分たちのほしいロボットをタブレット上で表現する自由制作を行いました。ロボットのアイディアはワークシートを使い準備しました。学んだことをしっかりと活かし、データの「入力」「出力」に分けて考えることができています。
この発表会も3回目の3年生は、1年生の時からは想像できないほど、はきはきと、堂々と発表を行います。まず「なぜそのロボットがほしいと思ったのか」を発表します。「お仕事から疲れて帰ってきたお母さんが楽をできるようにお料理ロボット」や「病気のひと病院までいくのが大変だから看病ロボット」のように、人のために役に立てるロボットを思いつく児童が多く、大人たちにもイノベーションの原点を思い出させてくれる内容でした。
すべてのゴミをちゃんと掃除してくれる「そうじロボット」
ロボットがごみを見つけると、ゴミを片付けてくれます。工作で作ったミニチュアの部屋の写真を背景に設定しているため、リアルに掃除しているような雰囲気がよく再現されています。ロボットがすべてのゴミを片付けてから、人がお礼を言うようにプログラムを組むところが難しかったそうです。1、2年生と比べ、身近な生活の中で、コンピュータを活用するという視点を得ることができたということがよく分かる発表でした。
3年間のプログラミング教育で得られた「3つの力」
3年生の授業の最後には、担任の副島先生から今年度の授業の振り返りがありました。プログラミングの授業を通して、児童たちが得たのは「3つの力」とまとめます。
-プログラミングをする力
-みんなで協力して取り組む力
-ねばり強く考える力
子どもたちが先生の振り返りを、「そうそう」「大変だったよ!」など言いながら、充実した顔で聞いていたのが印象的でした。
3年間の感謝の気持ちに感動
最後には子どもたちから、講師の末廣やお世話になった方へのお礼のメッセージをもらいました。「末廣先生が優しく教えてくれたのが嬉しかった」「こんな授業を受けさせてくれてありがとうございました」「いつもわくわくしてプログラミングの授業を待っていました」などの言葉をもらい、最後には「3年間お世話になりました!」と全員で伝えてくれました。その場にいた先生方、サポートスタッフの方、教育委員会の皆様、DeNA関係者もみんな胸がぐっと熱くなり、涙をこらえていたメンバーもいたほどです。
次期指導要領の「主体的・対話的で深い学び」そのもの
授業後の先生とDeNAメンバーの振り返りのなかで、次期指導要領に盛り込まれた「主体的・対話的で深い学び」は、プログラミング教育を通して得られるのではないか、という話がありました。論理的な思考を必要とするプログラミングを理解しようとすることで「深い学び」につながり、チームで共同作業を行い課題を解決しようとすることで「対話的な学び」を得、自分で解決しようと努力し達成感を得ることで「主体的な学び」となり、子どもたちの成長につながって行ったように感じたとのことです。それを聞いていたDeNAメンバーからは「まさにビジネスでも重要な過程で、社会に出たときにも大いに役立つはず」という意見もありました。
プログラミング教育のこれからに向けて
DeNAでは、一貫してプログラミングの楽しさをこどもたちに伝えたいという思いで、低学年向けのプログラミング教育に取り組んできました。「原体験として楽しみを感じられる1年生から」という取組内容は、児童の発達を考えると難しい部分もあります。 しかし、授業や成果発表会を通じて、子どもたちの作品に対するこだわりや、失敗して悔しがる姿、何より、成功して大きな歓声をあげ、全力でプログラミングを楽しんでいる姿を目の当たりにし、低学年で実施することの大きな価値を感じることができました。
これから小学校の現場の先生方は、2020年の指導要領の改訂にむけ、どのように授業で取り組むべきか、試行錯誤を繰り返していくことと思います。DeNAは、引き続き次世代を担う子どもたちを育てるための教育改革の一環としてプログラミング教育に取り組み、そこで得た成果を発信し続けます。