2年目を迎えた熊本県多良木町でのIT人材育成の取組
DeNAは、熊本県多良木町と2021年8月に「IT人材育成事業に関する協定」を締結し、町内の小中学校全校を対象として、プログラミング教育をはじめとした様々な支援を行っています。(背景や1年目の取組はこちら)
2年目を終え、着実に広がりを見せた多良木町での2022年度の取組をまとめて振り返ります。
▲妙見野自然の森展望公園から見る雲海とドローン
プログラミング教育は小学校全校へ支援を拡大
多良木町の小学校でのプログラミング教育は、初年度はモデル校1校での全学年への授業から始まりました。2022年度は、その内容をもとに、現地やオンラインでの支援、指導案や動画などの提供を行い、町内の全小学校、すべての学年でプログラミング授業を行いました。
DeNAでは、低学年のうちからプログラミングに親しむことをおすすめしており、プログラミングゼミの導入や生活科などで、まずは楽しいと感じてもらうような授業を行っています。
2年生の生活の「生き物と遊ぼう」の単元では、生き物の育つ場所、変化や成長について考え、世話の仕方を工夫したり関わりを振り返ったりして、自分なりの方法で表現します。今回は、蜻蛉や魚などの生き物が、見つけた場所で動いている様子をプログラミングで表現しました。2年生は自分の選んだ生き物を動かすために、試行錯誤しながら作品を仕上げました。
発表会の最中に、1年生が通りかかったため、1年生にも作品をさわってもらいました。描いた絵が本物の生き物のように動く様子に、1年生もとても興味を持った様子で、教室は大盛り上がりでした。
▲「生き物と遊ぼう」の作品で遊ぶ1年生
中・高学年になると図工や総合的な学習の時間などで表現や問題解決のためのツールとしてプログラミングを活用しました。
久米小学校では、6年生が卒業制作として、「久米小の今と未来」について、動画を制作しました。地域の成り立ちや、小学校の歴史、今の小学校での学びなどをプログラミングも使いながら10分の動画にまとめたものです。
この動画は、創立150周年の式典での学習発表会にて、他の学年の児童や保護者の方に向けて披露されました。6年生担任の鳥越星(あかり)先生は、「子ども達が中学校、高校へと進学する中でも今回の動画作成の経験は大いに生かされていくだろうと感じました。」とコメントされました。
また、今年度の大きな成果としては、モデル校の先生方から、昨年度の経験をもとにした授業の提案をいただくことができ、複数の新たな授業開発につながったことです。
先生方にとっても、児童にとってもプログラミングをツールとして活用できる環境が整いつつあることが実感できました。
中学校でもプログラミング教育支援を開始
▲micro:bitを使った授業の様子
今年度からは新たに中学校での支援も始まりました。まず初めに、3年生の技術家庭科の「計測と制御」の単元でmicro:bitを用いて授業を行いました。micro:bitの導入として、各機能の使い方や基本的なプログラミングを学ぶとともに、現役のDeNAエンジニアからコンピュータサイエンス的な考え方を伝えました。
生徒の皆さんは、苦戦しながらも楽しみながらプログラミングに取り組みました。
ドローンやVRなど技術に触れる機会も
多良木町との取組は、プログラミング教育支援に限らず、幅広くIT人材の育成を目的としています。地域にIT企業がないことから、実際の社会でIT技術がどのように使われているかを子どもたちに考える機会や、職業観の醸成に役立つ機会も提供しています。
IT技術に関しては、学んだプログラミングが実社会ではどのように活用されているか、理解を深めるために、小学校ではドローン、中学校ではVRに関する授業を行いました。
ドローンを活用した授業では、小学校5年生を対象にして、実際に自分でドローンを飛行させる体験を行い、併せて実社会のどのようなシーンでドローンが活用されているかも学びました。
▲VRを体験する中学生
中学2年生を対象にしたVRを活用した授業では、「映像のVR」と題して、360度カメラや立体視の原理を伝え、実際にヘッドセットを着用してもらいVRを体験しました。理科の光の屈折や、数学の関数などを使って、映像がプログラムされていることを説明しました。教科と接続しつつ、かなり高度な内容となりましたが、生徒の皆さんはVRの体験とともに高い関心で授業に参加していました。
休み時間には、他の学年にも対象を広げたため、体験待ちの長い列ができました。
実は多良木町内でも、普段、一般に開帳していない仏像などをVRで見られるように観光ポイントに同じVRヘッドセットが配備されているそうです。これを契機に町の機材を学校でも使ってみようという話があがり、今後の展開も期待が高まりました。
IT技術を活用できる人材に キャリアやリテラシーの授業も
キャリア教育の観点では、今年度は、小学校5、6年生、中学校1年生を対象にDeNAのスマートフォンゲーム「逆転オセロニア」のゲームプロデューサーである香城卓から、ゲームプロデューサーという仕事やIT企業での働き方などに関する講演を行いました。
香城のいる東京のオフィスと各学校をオンラインでつなぎ、授業を行いました。児童生徒からは、「仕事の大変なところは?」「ゲームのアイディアが思いつくのはどんなときですか?」など活発に質問が投げかけられました。
▲オンラインで行った講演の様子
別の日には、プログラミング作品をSNSへ公開する過程で起きる判断シーンを題材に、権利や機会・リスクについて学ぶ授業も合わせて行うなど、様々なテーマで授業を行いました。
もっとやりたいを叶えるイベントの実施
2月には、一般財団法人たらぎまちづくり推進機構主催にて、町内の小学校高学年から中学生を対象としたプログラミングイベントを実施しました。
▲DeNAエンジニアとオリジナルゲーム制作
このイベントは、興味を持った児童生徒に、より自由でクリエイティブな場を提供することを目的として、参加者がプログラミングゼミで「自分の好きなゲームを作る」という内容で実施しました。事前のオンラインミーティングでは、DeNAのゲームディレクターから、面白いゲームを作るコツや企画書の書き方を学び、参加者が自分自身で、ゲームの企画書の立案から行いました。
イベント当日は、エンジニアとチームを組み、企画の整理からプログラミングまでを行い、オリジナルゲームを制作。最後の発表会ではそれぞれの個性あふれる作品を堂々と発表することができました。
1日でオリジナルゲームを制作するというチャレンジングな取組ではあったものの、想像を超えたオリジナリティのあふれるゲームが制作され、講師陣も子供たちの可能性に大変驚きました。
2022年度を振り返って
多良木町でのIT人材育成事業は、2年目を終え、プログラミングと技術の活用や職業観などコンテンツも充実し、面で大きく広がった1年でした。児童生徒の皆さんは、より一層、興味関心を高くもち、参加していた様子でした。また先生方とも多くのやり取りを行い、協働しながら授業を提供することができ、お互いに学びの多い取組となりました。
DeNAが目指すのは、このような取組を通じて、子どもたちの将来の可能性を広げていく手助けをすることです。これからの社会をつくっていく子どもたちにITの力と可能性に触れてもらうことで、一人ひとりの職業観の醸成に寄与し、自分らしく明るい未来の選択ができることを願います。
DeNAのプログラミング教育に関するお問合せは、 pro_edu@dena.com までご連絡ください。